汗による皮膚トラブルというと「あせも」を思い浮かべる方が多いと思いますが、実はそれ以外にも以下のようにたくさんあるのです。
1.汗疹(かんしん)
2.汗によるかぶれ(接触皮膚炎)
3.エクリン汗嚢腫(エクリンかんのうしゅ)
4.汗管腫(かんかんしゅ)
それぞれ若干、治療方法が異なるため鑑別診断は大切です。
汗疹
「かんしん」と読みます。
いわゆる「あせも」のことです。
かゆみを伴った赤いプツプツ「紅色汗疹(こうしょくかんしん)」と、かゆみをあまり伴わない皮膚のプツプツ「水晶様汗疹(すいしょうようかんしん)」の2種類があります。
赤ちゃんによく見られる「あせも」は「紅色汗疹」です。
原因
暑熱環境や高温多湿下において大量の発汗が起こり、汗を出すための管(汗管)が詰まり皮膚の中に汗が溜まってしまうことで発生します。
運動をしてたくさん汗をかいた時、むれやすい通気性の悪い衣類を着た時、ギプスを着用している時などに起こりやすいので注意しましょう。
症状
わきの下、肘・膝の裏・首の周り、臀部、鼠径部、ウエストの部分など、汗をかきやすく肌と肌が密着しムレやすい部分に起こりやすいです。
紅色汗疹はかゆみやチクチクした感じを伴うことが多く、小さな赤いプツプツが汗をかくと急速にたくさん出てきます。
水晶様汗疹はかゆみを伴うことが少なく、赤みを伴わないプツプツが出現しますが、汗が溜まっている部位が浅いため、汗をかかない環境にすると数時間〜数日で自然に引くことが多いです。
大人でも発熱時に見られることがあります。
治療
皮膚症状が軽ければ涼しい環境で過ごすようにして通気性の良い衣類に替えるだけで自然に治っていくことが多いです。
掻破によって湿疹化した場合は症状の程度によっては外用治療が必要になります。
特に赤ちゃんや小児の場合は掻き傷から「とびひ」を併発するケースもあるため、早めに皮膚科や小児科を受診しましょう。
大人の水晶様汗疹には塩化アルミニウムローションを使って治療と予防をすることも多いです。
予防と生活の注意点
・涼しい環境で過ごすようにする。外出時は扇子やうちわで風で汗を飛ばす。
・汗をかいたら早めにシャワーを浴びて汗を流す
・通気性、吸湿性の良い衣類を身につける(下着は一番大切!)
・首に髪がかからないようにまとめるか、吸汗性のあるタオルなどで首を覆う
・素肌にアクセサリー類を付けない
・小さな子供の場合は掻いてしまっても傷にならないよう爪をちゃんと切っておく
汗によるかぶれ(接触皮膚炎)
あせも(汗疹)と違いプツプツではなく、皮膚が赤くなります。
かゆみを伴うことが多いですが、ヒリヒリして痛いという症状を訴えるケースも少なくありません。
とくに皮膚と皮膚がひっつく部分(間擦部)に出来やすく、むれて湿疹が悪化しやすいので注意が必要です。
治療は皮疹の程度によってはステロイド外用剤が必要になることがあるため、皮膚科を受診しましょう。
予防と生活の注意点は「汗疹」と同じです。
特に女性の場合、通気性の悪いパンティやストッキングは避けましょう。
エクリン汗嚢腫
汗腺には2種類ある
汗を出す管にはアポクリン汗腺とエクリン汗腺の2種類あります。
上の図をよく見てください。
アポクリン汗腺が毛根に開口していますが、エクリン汗腺は皮膚に直接開口しているのが分かるでしょう。
つまりエクリン汗腺は皮膚の部分ならどこでも全身に分布していますが、アポクリン汗腺は毛がはえている部位にしか存在しません。
そしてニオイの元となる汗を出すのはアポクリン汗腺。
わきの下や外陰部、下腹部、乳首などに存在します。
ワキ汗やワキガの悩みはアポクリン汗腺によって引き起こされているわけです。
エクリン汗腺から分泌された汗は無色でニオイもありません。
顔から汗が出るのはエクリン汗腺。
このエクリン汗腺が袋状になった良性腫瘍がエクリン汗嚢腫です。
症状
原因不明で中年以降の女性に多く見られる傾向があります。
しかも顔や首など、目立つ場所に出来るため女性にとっては悩ましい。
汗をかいたときにプツプツと出現し、汗をかかなくなると目立たなくなります。
毛穴が盛り上がったような肌色の小さなプツプツで、触るとザラザラする、鳥肌のような肌になっている、痛みやかゆみは伴わないことが多く、夏期の入浴後や屋外で汗をかいた時に目立ち、翌朝起きると目立たなくなっているなどの症状があります。
汗をかかない冬期には目立ちません。
目の周りやおでこ、口や首の周りに多く見られますが、顔中に見られることもあります。
治療
初期は汗がひくとプツプツも消退するのですが、繰り返し慢性化すると汗がひいてもプツプツだけは残ってしまうこともあるため、早めの治療をお勧めします。
当院では塩化アルミニウムローションを予防と治療に使用しています。
入浴時には凍った保冷剤で顔を冷やしながら湯船につかるのも効果的です。
引かなくなってしまったエクリン汗嚢腫はレーザー治療などを行う施設もありますが、数が多いときりがないため、悪化しないよう予防が大切です。
汗管腫
汗管腫とは?
エクリン汗腺が増殖して隆起した良性腫瘍。
袋状になったエクリン汗嚢腫の「なれの果て」とも言えます。
増殖して腫瘍になってしまうと汗がひいてもブツブツはそのまま消えなくなってしまうのです。
症状
エクリン汗嚢腫よりも少し大きめのブツブツが顔、特に目の周りに好発するため女性が気にして受診に至るケースが多いです。
通常、かゆみや痛みは伴いません。
治療
汗がひいてもブツブツは変わらず、症状が固定してしまうとレーザー治療などが必要となります。